脂肪腫摘出術のMRI画像診断の重要性/にしやま形成外科皮フ科クリニック(名古屋栄3丁目)
2015-04-09
脂肪腫について
脂肪腫の患者様は、一般的に当クリニックに来院されるまでの経過が長い方が多い傾向にあります。脂肪腫が感染などを起こさずにゆっくりと大きくなるという性質のため、放っておいても良いかなと思っていたり、近医を受診するもこのまま経過を見ても大丈夫と言われていたりと様々です。
確かに、小さいうちは特に何か症状がでるわけでもありませんが、大きくなってくるとそうとも言えないようです。経験上10cmもの大きさになるには、3年から10年ぐらいの期間が必要になります。
当クリニックでは、脂肪腫の位置とその性状をMRIないしはCT検査を行い確定診断を行います。これは、手術をする前の大変重要な検査の一つです。
例えば、上腕に10cmの脂肪腫があると重量と厚みがでてくるために、下層の筋肉を圧迫したりするので腕のだるさや肩凝りなどの症状を感じるという訴えがありました。
また、腹部の11cmの脂肪腫では、不自然な膨らみと仕事や運動などをするときに違和感と時に軽い痛みがあると言われていました。
肩の9cmの脂肪腫の方も、片側の肩凝りと圧迫感、重だるさの症状と膨らみ気にしていると言われていました。
本来ならば、小さいうちに来院していただき取り除くのが最も望ましいのですが、このように脂肪腫もある程度の大きさになってくると、そのものの重量と周囲組織を圧迫するなどによる何かしらの症状が出てくるのは確かなようです。
画像診断にて、下層とのつながりや周囲への影響が無い、皮膜に包まれているなど局所麻酔の手術で取り除く可能であると確認ができたら手術の計画に入ります。
摘出手術には、まず30Gの最も細い針を使った部分麻酔を行います。麻酔は、脂肪腫ができている部分全体に行いますが、30Gでゆっくりと注射するので患者様が想像しているより痛みは少ないのです。
次に、皮膚をメスで切開して、脂肪腫の上縁が見えたら全体がよく見えるようにして、後は手刀(手の感覚で)で脂肪腫を剥がしていきます。この方法は、はさみでカットしていくよりも、周囲組織にダメージが少なく早く確実な方法です。ただ、手刀は経験とセンスが必要なので、信頼のおける形成外科医をお探しになられるのが良いと思います。
取り出す手術に要する時間は、だいたい20分ぐらいです。取り出した脂肪腫は、病理検査という細胞検査に出し1週間ぐらいでレポートが出てきます。創部の止血と生食液による十分な洗浄をおこない、皮膚の縫合に入ります。
皮膚の縫合は、形成外科的手技により丁寧に2層縫合を行います。真皮は、透明な糸で縫合をおこない創部が拡がる力を緩和します。これだけで、縫合創はピッタリとよっています。そして、皮膚表面を黒い糸で縫合するこれが2層縫合です。ちなみに、真皮縫合の糸は抜糸をしません。
創部は、脂肪腫が出来ていたスペースがありますので、この部分に血液などが溜まってしまうと、痛みや感染のリスクが起こるので、ドレーンとういうシリコンの細いチューブを1~2日いれて、排液を行います。
術後5日経過したら皮膚を縫っている糸を抜糸します。抜糸をしたらキズアトに肌色のテープを貼ります、またキズアトが早く良くなるように6ヶ月間内服治療を行います。